この手紙は、
ずっと生きづらかった私だからこそわかるアスペルガーの子の「本当の気持ち」(大和出版)に、
収録されているものです。
まだアスペルガーの診断を受ける前の、6才だった自分に、
42才の私が心をこめて手紙を書きました。
この本は一度絶版になりかけましたが、
SNSでのたくさんの人の呼びかけで増刷がきまりました。
お子さんに発達障害の告知をするときにも役に立つかもしれません。
発達障害当事者の方が誇りを取り戻すのにも役に立つことを願いました。
この手紙は私にとって自分との約束です。
大人としてこの6歳の子との約束を守りたいと思います。
発達障害者でも、妻にも母にも社長にもなれます。
大人として社会をよくすることができます。
ぜひこの本が消えないよう、お力をかしてください。
「6歳の私への手紙」
助けて欲しいときにはいつでも声をかけること
直子さま
こんにちは、お元気ですか?私はとても元気です。
6才のあなたの生活ぶりは、具合が悪くなったり、友達とケンカしてしまったり、楽しくないことやつまらないこともたくさんあるのだと感じました。嫌なこともがまんして、毎日学校に通って、弟や妹の世話もしていることを、とてもえらいと思います。
がんばることも大事だけれど、6才は、まだうまくできないことがたくさんあってもいい年です。これからどんどん大きくなっていくスタートにやっと立った年です。1年生なのですから、これから6年生になるまで、ひとつひとつ身につけていけばいいのです。あわてないこと。
新しいことや、いままできなかったことにチャレンジするとき、お母さんやお父さん、学校の先生は必ずその様子を大丈夫なように見ています。ですから、困ったときやどうしたらよいか分からないとき、苦しいときや痛いときは、すぐにおとなに「助けてください。」「手伝ってください。」と声をかけていいのです。
おとなもうっかり気がつかないときや、忙しくてすぐに動けないときもあります。あきらめないで根気よく声をかけ続けるのがコツです。
いいことは必ずそばにある
それから一日のなかで、今日は大変だったなあと思ったら、こんな風に考えてみてほしいのです。
「いいことはなかったかな?」
ひとつ嫌なことがあっても、実は1日の中にはそれよりもたくさん「いいこと」が用意されています。
図書室や家には大好きな本がたくさんあると思います。うるさい弟や妹も、やっぱりかわいいと思います。空や海は毎日ちがってきれいです。お母さんのつくるご飯はいつだってとてもおいしいと思います。
「好きなこと」なんて言い方もするかもしれませんが、こうした「いいこと」は少し気をつけて考えてみると本当にたくさん、しかも手を伸ばせばすぐ届くところにあるのです。
そして大きくなればなるほど、「いいこと」は増えていきます。勉強をすればもっとたくさんの本を読めるようになって、もっともっと読書は楽しくなります。算数を勉強すれば、自分で買い物もできるようになります。体育だってボールが当たらなくなれば楽しくなるかもしれない。
おとなになったら、「いいこと」を自分や家族のためにお金で買うこともできるようになります。そのためにお父さんやお母さんは毎日一生懸命会社や家で働いているのです。
「夢」は簡単には見つからない
「いいこと」はいまもこれからもすぐにたくさん見つかりますが、もしかしたら、それだけでは物足りなくなる日がくるかもしれません。
小学校にいる間にも、何回も「夢は何ですか?」と聞かれると思います。「大きくなったら何になりたい?」という質問も、言い換えれば「夢は何ですか?」と聞かれているのです。
この「夢」というものは、「いいこと」ほど、簡単には見つかりませんし、かなえるのも楽なことばかりではありません。
クラスの友達に「プロ野球の選手になりたい。」と言っている子はいませんか?本気でプロ野球の選手になろうと思ったら、たくさん練習しなければなることはできません。実力も運も必要です。日本中たくさんの男の子たちがプロ野球の選手になりたがるけれど、本当になれるのはほんの少しです。
「夢」というものは、それを口にするのは簡単です。でもせっかくですから「夢」を本当にかなえるつもりで持ちたくはありませんか?
おとなの私もいくつか夢をかなえることができましたが、そのために結構がんばりました。
文章を書くのにずっと机にむかい続けて体が痛くなったこともあります。ゲームだけではなくて、パソコンでお店を開く方法が知りたくて、本を見ながら勉強しました。何度やってみても分からなくてできなくて、夜が明けてしまったこと、気持ちが悪くなったことも、熱がでてしまったこともあります。
嫌でも苦しくても、どうしてもやりたくなることが「夢」です。「いいこと」と「夢」の違いをぜひ知っておいてください。
おとなは子どもの夢をいつも応援したいと思っています 本当の夢はそんなに簡単に見つからない。そのことはお父さんやお母さんもよく知っています。ゆっくりと時間をかけて素敵な「夢」を探してください。
そんな「夢」を見つけやすくする工夫を教えます。
たくさん本を読んで、先生の話をたくさん聞いて、友達ともどんなことが楽しいかどんなことをがんばっているかたくさんお話をして、いったい世の中にはどんなことがあるのかをまずは知ることです。
その中に面白そうなことがあったら、できるだけチャレンジしてみることです。やってみないことには、それが好きになれるかなれないかも分かりません。好きじゃないけどやめたくないと思ったら、もしかしたらそれが「夢」というものにこれから育っていくかもしれません。
こういうふうに、たくさんのことを見聞きして、「夢」を探すことを、難しい言葉ですが、「視野を広げる」といいます。
苦しいことも全部役立つ
あなたはいま、学校で過ごす中で大変だなあと思っていることがいくつかあると思います。どうしてこんなことをしなければいけないのかなあと思っているかもしれません。どうしてこんなに長い時間座って、つまらない授業を聞かなければならないのだろうと思っていませんか?
そう思ったら、こんなふうに考えてみてください。「どうしたらこのお話はもっと面白くなるだろう?」「どうしたらもっと分かりやすくなるだろう?」自分ならどんなふうに教えるか考えてみてください。
絵を使って説明してみようかな?音楽をつけたらどうかな?途中でゲームを混ぜたらどうだろう?グループを作って話し合ってみたらどうだろう?
ひとつ大切なことがあります。楽しく分かりやすく人に教えるためには、自分がきちんとその内容を分かっていないとできません。人に楽しく教えてあげるために、まずは全部先生の話を分かるまで聞いてみる。先生の教え方のいいところ、自分ならこうしてみたいことを考えてみる。
つまらないと思う話も、自分ならどうするかを考えはじめると、必ず一生懸命聞くことができるようになるのです。
自分が嫌だったことは絶対に人にしない
友達とケンカしてしまうことは本当に嫌なことだと思います。悪口をたくさん聞いたら悲しくなると思います。
でも、自分が悪口を言われて嫌だなと思ったら、絶対にそれを自分は言わないようにすれば、他に悲しくなる人は増えません。
人はケンカをするものです。6年生になるまできっとこれからもたくさんケンカをするし、他の人のケンカも見ると思います。おとなだってケンカします。
「もうケンカをしたくない」「ケンカをしないようにしよう」
そう心から思えるのは、ケンカをして嫌な気持ちになったことがある人なのです。仲間はずれだってそうです。「仲間はずれって嫌だなあ。」と思ったことがある人が、「もう絶対に仲間はずれにならないようにしよう、自分もしないようにしよう。」と思えるのです。
嫌なことが起きるのは、次にそれが起こらないようにその人が工夫をできるようになるために、わざとそうなっているのです。神様の意地悪ではなくて、うまくできるようになるために勉強してごらんという親切なのです。
嫌なことや苦しいことには、全部それがある理由があります。もしもいつまでたっても嫌で苦しいままだったら、「このやり方は自分にどうしても合わないことが分かった。」と思えばいいのです。
嫌なことや苦しいことを早く抜け出そうとがんばれば、とても幸せになることができるのです。
新しい道具をどんどん使えるようになろう
6才のあなたは、きっと「ドラえもん」や「鉄腕アトム」を見て、未来を想像しているのではないかと思います。便利な道具がたくさん出来て、なんでも簡単にできる世の中になっているかもしれない。ロボットと友達になって、色々なことを助けてもらえるかもしれない。
約束します。未来はどんどんよくなっていきます。
普通の家で、誰でも簡単にコンピューターが使えるようになります。テレビ電話も使えるようになります。車を運転できるお母さんがどんどん増えて、どこだって楽に行かれるようになります。
使い方を覚えるのは少し難しいかもしれないけれど、新しい道具の使い方を覚えると、それで苦手なことやどうしてもできなかったことが、簡単に楽にできるようになることがよくあります。難しそうだなと思う気持ちに負けないで、どんどん使ってみてください。使ってみてやっぱり難しすぎたら、すぐ違う方法を考えればいい。
外国にもたくさん行こう。やったことがないこともたくさんやってみよう。人は立派になるためにチャレンジするのではないのです。たくさんのことにチャレンジすれば、どんどんパワーアップして人の役に立てるようになります。
例えばドラえもんや鉄腕アトムのように。
人の役に立って優しくできるために、いろいろなことを勉強して身につけていくのです。人にしたことは必ず自分に返ってきます。人に優しくできるようになれば、周りはあなたに優しい人でいっぱいになります。
人はどんどん優しくなっていく
そして6才のあなたがこれから大きくなっていくように、友達も大きくなって、おとなになっていきます。
あなたをからかい、悪口を言った子も、おとなになったら多分そんなことはしない。人の苦しさが分かるようになって、優しい言葉をかけてくれるようになります。困っている人の助け方もたくさん知っていると思います。
もしもあなたが友達をつくることをあきらめなければ、これから何十年の間に、本当に気のあう人やあなたのことをよく分かってくれる人も見つかることでしょう。いまはご近所の友達が多いはずですが、おとなになれば外国に行って友達を作ることもできるようになります。
お父さん、お母さん、先生たちも、もっともっとたくさんの経験をしておじいちゃんおばあちゃんになっていきます。あなたのおじいちゃんおばあちゃんが優しいように、きっと怒らずに色々な知恵を授けてくれるようになります。
未来になればなるほど、人は優しくなっていきます。
6才のあなたはいま、自分のことで精一杯かもしれないけれど、世の中には色々な理由で困っている人がたくさんいます。いま通っている小学校の友達にだって、もしかしたら中には病気や他の理由で不自由している子がいるかもしれません。普段は元気な友達だって、具合が悪い日や、困ったことが起る日もあるかもしれない。
食べられないものがある子ども、体がかゆくなってしまう子ども、お父さんやお母さんが深い悩みを抱えている子ども、災害にあってしまった子ども、他にも「いろいろな不自由」を抱えることが人には誰でもあるのです。
おとなだって同じです。うんと年を取れば体が不自由になったり寝たきりになったりする人もいます。
未来には、そういう人たちひとりひとりに優しくしようという雰囲気が強くなっていきます。どんな状態の人でも、ひとりひとりを大切にしようと思う人が増えていきます。
いまはあなたに「きちんとしなさい。」「普通にしなさい。」と言うおとなが多いかもしれないけれど、あなたが人に優しくすることを忘れなければ、未来には「あなたのやり方でいいよ。」と言ってもらえることが増えていきます。
そして幸せな未来を作るのは自分
そして一番大切なことを伝えます。未来はどんどんよくなっていきますが、そこで毎日を楽しくすごせるかどうかは、自分しだいです。
これからたくさん楽しいことも嫌なことも起こります。困ったこともたくさん起こると思います。
「どうやったらうまくできるかな?」
それを考えることを絶対にやめないでください。
嫌になって投げ出してしまったり、途中であきらめてしまったり、そもそもチャレンジを一切しない生き方になってしまうと、どんなに未来がいい世の中でも、そこで楽しく暮らすことはできません。
幸せな未来を作るのは自分なのです。
私はいつもあなたのことを、心をこめて応援しています。実は6才のあなたにお礼を言いたいことがあるのす。それは最後の最後にお話しします。
この続きはどうか本を読んでください。
本を買って読んでいただけなければ、その本は絶版となり、
私という当事者の声が社会に届かなくなります。
ブログや電子書籍はダメなのです。
図書館に置いてもらえること、
お孫さんの心配をしているおじいちゃんやおばあちゃんも手に取れること、
私という当事者が心をこめて書き、
編集・出版のプロが「世の中に出して良い」と精査したものでなければ、
教育や医療現場での信頼が得られないのです。
どうか私に力をください。
いただいた力で、社会をよりよく変えることをお約束します。
著者アズ直子
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