もうすぐ私死ぬのかもと思った、教訓のない夢のような話

「穏やかな実家」

 

このブログにはなんの教訓もありません。

 

甥っ子の端午の節句を祝うために、

実家に行った。

 

今年の夏、3歳になる甥。

弟夫婦。

 

弟は住宅会社に勤めている、義理の妹は専業主婦。

 

父と、

母と、

ダウン症の妹と、

 

預けている飼い猫のとら蔵。

 

甥っ子は黙々とご飯を食べ、

そして寝てしまった。

 

すごい寝息を立てて寝ている、

起きもしない。

 

父は機嫌よくビールを飲み、

適当に並んでいる料理を食べている。

 

母はいつもの通りにバタバタと賄いをし、

座っては立ち、立っては座る。

 

妹の桜子は、

ずっとずっと食べていた。

どうしたのと思うくらい。

 

弟はもともとあまり話さない。

いつものように、

どこか飄々と料理をつまんでいる。

 

義妹は、いつも穏やかで、

手作りして来たロールケーキを振舞っている。

 

とら蔵は、時々やって来ては、

何か美味しいものがないかとテーブルをのぞいていては、

また家のどこかに隠れてしまう。

 

こんな食卓で、

いつも話題になるのは、

父の兄、私にとっては叔父のこと。

 

男三兄弟の長男で、

それは破天荒な人だ。

 

数年前に、癌になったけれどまだ生きている。

その間に連れ添った奥さんが亡くなってしまった。

 

亡くなった祖母は、

「あの長男だけは許せない」と認知症になってからも、

はっきりと憎んでいた。

 

貸したお金を踏み倒したらしいが、

それだけではない。

 

叔父は祖父母に、

ずっとずっと迷惑をかけ続けた。

 

 

大学の入学金を持ち逃げし、

結局受かった大学に進学しなかった。

 

その大学はとても有名なところなので、

バカではなかったのだと思う。

 

祖父母は大学からの、

「入学金が納められない」という電話で事態を知ったそうだ。

 

その後、警察官キャリアだった祖父の口利きで、

交番のお巡りさんになったものの、

すぐに喧嘩をして辞め。

 

ヤクザに追われていた時期もあったと、

嘘か本当かわからない物語を持っているけれど、

指は何本か欠けている。

 

私は本人から機械に挟んだと聞いた。

 

結婚は2回したバツイチで、

どうやら最初の離婚は、

叔父の暴力が原因だったらしい。

 

そのあと結婚したおばさんは、

優しくて働き者でとてもいい人、私は大好きだった。

 

叔父さんがお金に困ると、

すっとパートに出て働く。

 

「あいつはいい女だ」と、

叔父は繰り返し言っていた。

 

一念発起し会社を建て、

途中までは順調だったけれど、

バブルのあおりで潰れ。

 

その後はどこで何をしていたかよくわからない。

おばさんは働きづめだった。

 

一度、夜中に警察から電話があり、

叔父を拘留していると。

 

交通違反か何かで警察官に注意されたところ、

暴れたらしく捕まった。

 

祖父の一声で保釈されたけれど、

祖父はとっても怒っていた。

 

おばさんが体を悪くした後は、

叔父は文句を言いながらもよく世話をしていたようだ。

 

ただ、亡くなったという報告はなく、

お正月の席か何かで、

「そういえば、あいつ死んだよ。」と。

 

叔父は、今は一人気ままに暮らしているようだ。

 

普段は連絡もよこさないけれど、

数日前、父に、

「痛風になった」と電話をよこしたそうだ。

 

今日、家族が集まる席で、

父が「電話してみるか」と叔父に電話をかけた。

 

「元気なの?今日みんな集まっているから。」

「痛風は?あ、治ったの。よかったね。」

「何かあれば連絡しなよ。」

 

父は私が実家にいた頃、ほとんど話をしない人だった。

親戚のことは憎んでいるように見えた。

 

そもそも話さない人が、

問題児の叔父に優しく話しかけているの見て、

なんだか、夢の中にいるような気がした。

 

「私さ」と私が話し始める。

 

叔父さんのことが結構好きなんだ。

あの衝動性というか、

いきなり起業しちゃうところとか、

おかしなところ、

 

よく似ていると思う。

 

叔父さんには子どもがいないけれど、

あなたと似ている血は、

確かに私に流れているよと伝えたい。

 

ふと父が言う、

あと数日でおばあちゃんの命日だと。

 

そういえば紫陽花の季節だったな。

 

もうすぐ誰かが死ぬのかな。

もしかしたら私が死ぬのかな。

 

いくつかの問題を抱え、荒れに荒れた実家は、

今日は穏やかだった。

 

こんな家庭になればいいなと夢見たことはない。

想像ができなかったから。

 

なんだかぼんやりした夜道を歩きながら、

静かすぎて、夢を見ているようだった。

 

不思議なことにアイフォンが起動しない。

写真が撮れないので、余計にそう思った。

 

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