【発達障害】言葉を真に受ける「さよならだけが人生だ」

  私には数ある発達障害の特質の中でも、「言葉を真に受ける」という特質が色濃く出ています。比喩や冗談が通じない、杓子定規に受け取るなど、専門書には解説されている特質です。例えば、「目に入れても痛くないほどかわいい。」という言い方がありますが、「目には入らないと思うし、本当に入れたら痛くてたまらないと思います。」と言い返してしまったり、「お手すきの時にお返事をください。」と言われると、手が空いたと感じられるまで、何ヶ月も相手を待たせてしまったりするのです。

 

 そんな特質の影響は様々ですが、大変淋しい思いをするこんなパターンについてお伝えします。

 

 人は何かの事情で、友情や愛情を確かめるために、聞けばうれしくなるような表現をすることがあります。「ずっと一緒にいようね」「離れてもずっと友達」。友人同士のことであったり、恋人同士のことであったりする表現ではないでしょうか。ビジネスのシーンでも意外と多いと感じています。「末長くよろしくお願いします。」「深い絆を構築していましょう。」

 

 私が長年携わっている癒し系の世界ではもっと面白い表現をすることもあります。目に見えない深い絆を「前世では夫婦だったのかもしれない」「ソウルメイト」などと表現することがあり、浮世離れしているのですが、実際そんな言い方をよく耳にすることがあるのです。

 

言葉を真に受け取る。

 

小さな子どもであれば、物語に出てくるサンタクロースの存在を信じていたり、比喩を真に受けてしまったりすることもがあります。そんな様子ととてもよく似ていると思います。

 

大人になるにつれて、「離れてもずっと友達」も「ずっとそばにいる」も、本当に実現することは難しいことがだんだんとわかってくるのですが、真に受ける特性がない人に比べて、身にしみてわかるまでかなりの時間がかかります。そしてどこかでまた信じている上で、実際は言葉の通りにはならないと、否定的に考えるわけですから、深い落胆や、言葉の通りにならないとわかってはいるものの、「嘘をつかれた」という被害者意識を持つこともあるかもしれません。

 

よく聞く言葉ですらこの調子なのですから、これが染み入るような言葉であれば、相当に感動しますし、心に残ります。ところが後から、あんなに心を込めて言ってくれた言葉なのに、その通りではなかったと激しく落胆する。だったらいっそ、初めから何も言わないでくれたらいいのにと思うこともあるほどです。

 

小学生の頃に読んだ小説にこんな言葉がありました。

 

花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

 

 知的障害がある女の子が、小学校のクラスに転校してきて、やっと仲良くなれた頃にまた転校して行ってしまったというシーンに添えられていました。こちらのほうが現実に近い。別離を経験するたびに思い出します。小学生の頃の私に、これからの心構えを教えてくれて、とても感謝をしています。

 

 

 

于 武陵
勘酒     

勧君金屈巵 
満酌不須辞 
花發多風雨
人生足別離

井伏鱒二の訳

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

 

 

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